コラム

「お客様は神様」の終焉? ~カスハラ対策義務化~

 長らく日本のサービス業やビジネス現場を支えてきた「お客様は神様」という価値観が、現在大きな転換期を迎えています。過剰な要求や理不尽な暴言、長時間の拘束といった「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化する中、改正労働施策総合推進法に基づき、すべての企業にカスハラ対策の雇用管理上措置が令和8年(2026年)10月1日から義務付けられます。

従来の「現場の頑張りや耐え忍びに頼る対応」から、「組織として従業員を護る体制づくり」への転換が、いま本格的に求められています。

☆企業に課される「3つの必須措置」

今回の法改正により、企業規模(大手・中小)を問わず全社に以下の体制整備が求められます。

  1. 基本方針の明確化と周知・啓発:「どのような言動がカスハラに該当するか」「発生時に会社としてどう毅然対応するか」の方針を社内に向け明確化し、就業規則やマニュアルへの反映を通じて徹底します。
  2. 相談体制の整備:被害に遭った従業員が安心して相談できる窓口を設置し、担当者が迅速かつ適切に対応できるプライバシー配慮体制を整えます。
  3. 発生後の迅速・適切な対応と被害者配慮:事案が発生した際の事実確認手順を確立し、被害を受けた従業員のメンタルケアや配置転換、必要に応じた警察・弁護士等との連携ルートを確保します。

☆「正当なクレーム」と「カスハラ」を切り分ける視点

企業が最も頭を悩ませるのが、「顧客からの貴重なご意見(正当なクレーム)」と「カスハラ」の線引きです。

厚労省の指針では、「言動の内容」(要求に正当性があるか)と「手段・態様」(威圧的な暴言、土下座強要、長時間の拘束などがないか)の2つの軸で判断することが求められています。サービス改善のための指摘には誠意を持って向き合い対応する一方、一線を越えた不当要求や人格否定に対しては、「これ以上は対応できません」と組織として毅然と断るラインをあらかじめ社内で共有しておくことが不可欠です。

☆お互いをリスペクトし合える健全な関係性

カスハラ対策の強化は、決して「お客様を拒絶する」ためのものではありません。むしろ、理不尽な不当要求に組織として一線を引くことで、限られた経営資源を正当なお客様への価値提供に集中できるようになります。お互いをリスペクトし合える健全な関係性があってこそ、真の顧客満足は生まれます。

企業と顧客がより良い信頼関係を再構築するための「ポジティブな境界線」として、この10月を新たな対話のスタートラインにしていきましょう!

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